ノアのはこぶね
『ノアのはこぶね』
ゲトルート・フッセネガー 著 松居 友 訳
アネゲルト・フックスフーバー 絵
女子パウロ会 1984年刊
あらすじと感想
みなさん、ご存じの旧約聖書のなかの物語です。人々の行いや心持ちがあまりにも悪く、それに怒った神が大洪水を起こそうとします。ただ、敬虔なノアとその家族だけは救おうと箱船をつくらせます。ノアは自分たち人間の所業に悲しみと怖れを抱き、毎日祈っていたのでした。神はノアに動物たちも救うようにいいつけます。そして、大洪水はすべての地を海に沈めます。箱船に乗ったノアとその家族、そして動物たちだけが大洪水から助かります。ここまでたいがいの人が知っている話ですね。このあとも陸地が見つからず、ノアたちに試練がつづきます。もちろん、最後は陸地にたどり着きます。神の怒りも鎮まり、心やすまるエンディングとなります。うつくしい絵とすばらしい物語のエッセンス、宝のような絵本です。
<読み聞かせレポート>
対象: 小学1年~3年生 1~5人
場所: 学童保育クラブ
2、3人、ときに1人と膝を寄せ合って読んであげる絵本です。文章量が多く、文体も子どもにはややかたすぎるかなと思いましたが、読みはじめるとみんなぐんぐん物語に引き込まれていきます。その力はまさに神がかりのようです。格調高い文章と清浄感のある精緻な絵がこの物語とよくマッチしており、読んでいる側も心洗われる思いです。小学1年生でもちゃんと最後まで聞いてくれました。この学童には、9歳になる自閉症スペクトラムの男の子がいます。ふだんはほとんどしゃべらないのですが「絵本なにがいい?」と聞いたところ、この本のタイトルを口にしてくれたのです。前に、ほかの子どもたちに読んでいたのをそばでちゃんと聞いていて覚えていたようなのです。それから、その男の子にこの絵本をなんどか読んでいますが、お人形遊びなどをしながらもじっと耳を傾けてくれます。特別な力がこの絵本には秘められているように感じます。