絵本の旅人

「読み聞かせ」のための実践レポートです!

ロージー、はがぬける

『ロージー、はがぬける』
 マリアン・マクドナルド   文
 メリッサ・スイート   絵
 松野正子   訳   冨山房   1994年

 

あらすじと感想

ぐらぐらしていたロージーの歯がついに抜けます。抜けた歯は枕の下に入れておく、というのがきまり。そうすれば歯の妖精がとりにきて、かわりに50セントくれるのです。でも、ロージーはそのつるつるの白い歯が愛おしくてなりません。あかちゃんのときからずっとロージーの歯だったから。たとえ50セントもらえてもあげたくありません。そのきれいな歯をパパにみせると、寝るまでちゃんとしまっておきなさいといわれます。ところが寝るときになると、その歯がなくなったとロージー。「はのようせいには、きのどくだったなあ。あれは、とてもきれいなはだったもの」パパがいいます。歯の妖精にごめんなさいという手紙を書き、ロージーは枕の下にいれます。翌朝、歯の妖精から手紙が届きました。歯がもしみつかったら、金のくさりをつけて返してくれると書いてあるのです。するとロージーは歯のあるところがわかるといいだします。そして大切な歯をまくらの下にいれて眠ると……。最後のページはなんど読んでも胸がきゅんとなります。あたたかな気持ちに包まれます。生きているかぎり読み返したい宝ものの絵本です。


読み聞かせレポート

対象: 小学3年生
場所: 教室(朝の読み聞かせ)

歯の抜け替わり真っ最中の3年生にはぴったりのモチーフです。絵本のサイズが小さく、絵柄も繊細なので教室の読み聞かせだとちょっときびしいかなとも思いましたが、文だけでも充分に伝わる作品です。抜けた乳歯をどうするか? これは国や地域によってさまざまなのでしょう。わたしの子どもの頃は、上の歯が抜けたら縁の下に、下の歯が抜けたら屋根に放るという習わしでした。以前、この作品を読んだあとに子どもたちに聞いてみたことがありました。何人かが枕の下に入れるといっていました。屋根や縁の下というのはゼロでしたが、そのときの子どもたちのほとんどがマンションに住んでいたのでこれはしかたないですね。
この本では、歯がどうしてなくなったのか、どこから出てきたのか、言葉でも絵でもいっさい描かれていません。読み聞かせのあと、子どもたちに質問してみたかったのですが、時間がありませんでした。次はぜひ聞いてみたいですね。きっといろいろな答えがかえってくるでしょう。
歯の妖精が金のくさりをつけたことになっています。でも大人が読めばだれがつけてくれたのかわかります。もしかしたら「パパ」だとわかってしまう子もいるかもしれませんが! 妖精でもパパでもどちらにしても子どもにとってはしあわせなエンディングです。もしかしたらパパのほうが心に沁みるかな。読み手である大人の心もほっこりとあたためてくれます。