絵本の旅人

「読み聞かせ」のための実践レポートです!

アントンせんせい

『 アントンせんせい』
 西村敏雄 作
 講談社 2013年

あらすじと感想

動物病院のアントンせんせいは、みんなにとても頼りにされています。大声競争をしてノドを痛めたニワトリや注射が大嫌いなトラがやってきます。あごがはずれたワニ、腰痛のヘビ、鼻がからまったゾウもやってきます。アントンせんせいはいつもやさしく動物たちをみてあげるのです。あるとき、友だちが遠くへ引っ越し元気をなくしてしまったヤギがやってきます。せんせいはヤギの話をじっくりと聞いてあげるでした。と、突然アントンせんせいは倒れてしまいます。動物たちがみんな心配してやってきます。どうやら、せんせいはみんなをみてやるのに夢中で朝から何も食べていなかったのです。動物たちはみんなでアントンせんせいのために料理をこしらえてあげるのでした。この絵本を読むと心があたたまります。こまっている者をいつも助けている人、その人が大変なときにかつて助けられた者が助けにやってくる。シンプルですが、心を打つ力強い物語だと思います。


 読み聞かせレポート ①
対象: 小学1年 27人
場所: はまっ子ふれあいスクール

アントンせんせいというタイトルだけで笑いの波がひろがります。アントンという名をどうやら面白がっているのです。アンコせんせい、アンコせんせいと呼んで、アントンせんせいをからかう子もいます。多少ざわついても、ふざける子がいても、この絵本なら大丈夫。アントンせんせいがつぎつぎと動物たちを助ける物語に子どもたちは引き込まれていきます。ねえ、クマは来ないのかな? ライオンは? ゴリラは? みんな自分が気になる動物の名をあげます。ワニが鼻の穴をくすぐられてクシャミをし、アゴがもとにもどるシーンでは大爆笑。ゴシックで書かれたカッポ~ンという擬音も景気づけに大きく響かせてやりました。「(自分の)おならが臭いんですけど」と病院へやってきたスカンクにも大・大爆笑でした。 読み終わってから動物の話でもちきりになりました。西村敏雄さんの描く動物の絵のなんとも言えない魅力かもしれませんね。

 

読み聞かせレポート ②
対象: 小学2年生 約30人 
場所: 教室(朝の読み聞かせ)

1年生たちに読んであげた時は、ワニがクシャミをするシーンで最大の盛り上がりとなりました。2年生たちはというと、アントンせんせいが倒れてしまう場面でいちばん強い反応がありました。水を打ったようにその場の空気が静まったのです。突然倒れたアントンせんせいを心配する張りつめた気持ちがひとつになった静けさでした。お腹がすきすぎて倒れたということがわかったとき、教室にいっせいに笑いがわき起こりました。安堵からきたうれしい笑い声でした。子どもたちのやさしい心を空気で感じられた、そんな貴重な読み聞かせとなりました。