絵本の旅人

「読み聞かせ」のための実践レポートです!

ばらいろのかさ

『ばらいろのかさ』
 アメリー・カロ  文  
 ジュヌヴィエーヴ・ゴドブー  絵
 野坂悦子  訳  福音館書店  2019年

 

あらすじと感想

海辺の村にある一軒のカフェ「みずたまエプロン」。そこを切り盛りするのは愛らしく、キラキラ輝いてみんなに慕われるアデルという女性。そのカフェで野菜と果物の出店を開いたり、なにかと世話を焼くのがリュカ。礼儀正しい若者でアデルに好意を抱いています。

太陽のように明るいアデルが苦手なのが雨です。雨の日はふさぎ込み、ときに寝床に入ったまま出てこない有様。ある日、店にばらいろのながぐつが置き忘れられます。持ち主は見当たりません。一週間後、今度はばらいろのレインコートがコートかけにかかっているのです。これも持ち主がいないのです。どれもアデルにぴったりのサイズ。そしてアデルは気がつきます。これは自分へのおくりものだと。次の週、今度は、ばらいろにみずたまもようのかさが置いてあるのです。アデルはだれが自分へおくりものをしてくれたのかわかりました。この日は大嫌いな雨、でもアデルはおくられたばらいろのながぐつをはきコートを着、かさをさして外へと出てみます。雨の音やぬれた草のにおいにどんどん楽しくなっていきます。道のむこうにリュカのトラックがどろにはまって動けないでいます。ふたりは雨のなかで出会い……。

恋心をストーリーにした絵本を読んだのはこれが初めてかもしれません。恋心といってもとても淡くピュアなもので、相手への思いやりがロマンティックに昇華されています。フランス風の洒落たセンスも味わえるカナダの絵本です。

 

対象: 小学5年生
場所: 教室(朝の読み聞かせ)

しばらく続いた曇り空が一掃された快晴の朝。きょうはこの小学校での初めての読み聞かせ。5年生のクラス。若干男の子が多いようです。4、5年生への絵本の読み聞かせは作品選びが難しいといつも感じています。刺激的な漫画の面白さ、魅力を味わっているので、絵本だと物足りない年齢なのです。

教室は落ち着いていて、とても静かです。さて、図書館で一目惚れしたこの絵本(もちろんしっかりと読みましたよ!)、どんな感じになるかな。はじめのうちは表情だけみているとほとんどの子が上の空というか興味のない顔つきです。前半はカフェとカフェを取り巻く状況描写なので、つまらないかな。月曜だし気持ちもちょっと重いよな……。中盤からなぞめいたおくりものの展開になり、興味を覚えてきた感触を得ます。終盤からラブストーリーの雰囲気がでてくると、女子が反応するのがよくわかります。それまで天井や壁に視線をさまよわせていた前席の女の子がやっと絵本に焦点を定めてくれました。最初から最後までしっかりと耳をかたむけこの作品を味わってくれた子ももちろんいました。そんな子が3人もいればわたしとしては大満足です。それと担任の先生がちゃんと聞いてくださることもうれしいですね。先生もこの作品、気に入ったような表情でした。いい絵本は大人も魅せますから。