絵本の旅人

「読み聞かせ」のための実践レポートです!

ルピナスさん

ルピナスさん』 
 バーバラ・クーニー 作
 掛川 恭子  訳

 

あらすじと感想

遠い国々の話をおじいちゃんからたくさん聞かせてもらった女の子。いつか自分も大きくなったら遠くへ行きたいと思います。「世の中を、もっとうつくしくするために、なにかしてもらいたいのだよ」大好きなおじいちゃんから贈られた言葉を胸に少女はやがて大人へと成長します。そして、昔からの夢だった遠い国々への旅を楽しみます。ある時、ラクダから落ちて大けがをしてしまいます。彼女は静養のため海辺近くの家で暮らしはじめます。部屋の窓から見えるルピナスの花。歩けるほど回復した時、彼女が大好きなそのルピナスの花が、丘のむこうで咲き乱れているのに心打たれます。そして、「世の中をもっとうつくしくする」というあの約束を果たすため、彼女は行動しはじめるのでした。花のうつくしさは人の心をなぐさめ、力づけます。命から生まれるうつくしさだからなのでしょう。そして、花のうつくしさに心動かされる人の心もまたうつくしいのですね。繊細さのなかに力強さを秘めたバーバラさんの絵が物語を不朽のものに高めています。


読み聞かせレポート 
対象: 小学5年生 約30人 
場所: 教室(朝の読み聞かせ)

道ばたでルピナスがむらさきの花を咲かせはじめた頃に読み聞かせしました。この作品が実話なのか、創作なのかはわかりません。でも、本当にあったことだと思わせる彫り深いディティールが印象に残ります。そして、あってほしいと思わずにはいられない話が語られています。未来へ残るべく強いプロットが貫かれています。読み聞かせしている時、全体的にはそれほど手応えはありませんでした。後ろのほうでにやにやと冷やかし気味でいた男の子の表情が物語が進むにつれ静まっていくのが視線の端にちらちらと入りました。目と目が何度か合い、そのたびにほほえんでくれた女の子もいました。その子はこの作品を知っていて、そして『ルピナスさん』が大好きなのかな。心強いほほえみでした。この絵本の作者バーバラ・クーニーが絵を担当した『満月をまって』(作 メアリー・リン・レイ)という作品があります。これも魂に深く刻まれるすばらしい物語で、子どもたちに紹介したい絵本のひとつです。こうした作品を読み聞かせするには自分のコンディションを整えていなければなりませんね。心を清め高めておかないと、こうした絵本はちゃんと読めないような気がします。