絵本の旅人

「読み聞かせ」のための実践レポートです!

しろいゆき あかるいゆき

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 『しろいゆき あかるいゆき』
 アルビン トレッセルト 著 ロジャー デュボアザン 絵j
 江國 香織 訳  BL出版 1998年

あらすじと感想

冬、アメリカのとある町。雪が舞い降りてきます。町の人もウサギも雪が降る前からその気配を感じています。子どもたちは灰色に低くたれこめた空をながめ、最初のひとひらが落ちてくるのを今か今かと待ちつづけます。やがて降ってくるやわらかな粉雪。 郵便屋さんはゴム靴をはき、お百姓さんは雪かき用のシャベルを用意し、お巡りさんはコートのボタンを上まできっちりとはめます。子どもたちは雪を味わおうと口をあけ、ウサギたちは巣穴でじっとしています。夜になり、雪はどんどん町に降り積もります。朝になると、一面まっ白の雪の世界。たっぷりと雪をかぶったカラフルな家々がとてもきれいです! 子どもたちは雪だるまをつくったり、雪合戦をしたりと大はしゃぎ。ウサギも巣穴から出てきてかわいい足跡を残していきます。やがて、冬は去っていきます。屋根の雪をとかし、つららとなって、つららは水となって流れていきます。地面に土があらわれ、コマドリが歌い出し、春を告げ、この絵本はおしまいになります。町に舞い降り、そして消えていく魔法のような雪を詩情あふれる言葉とシンプルな絵で描いた1948年刊行の作品です。

 

読み聞かせレポート
場所: 教室(朝の読み聞かせ)
対象: 小学2年生  20名

1月の“朝の読み聞かせ”でこの絵本を選びました。読み聞かせの朝、雪こそ舞っていませんでしたが、吐く息が白いほど寒く、こんな日にはぴったりの作品でした。まっ白なページに詩のプロローグ。江國香織さんが訳した文はやわらかくリズムがあって、まず雪そのものを語る言葉が子どもたちの心をつかみます。いいはじまりです。20世紀中頃のアメリカの町、そんな風景ものんびりしています。ゆっくり、ゆっくり読みます。郵便屋さん、お百姓さん、お巡りさんなどの人物スケッチも味があります。絵本のチカラなのでしょう、子どもたちにも異国のノスタルジックな世界が伝わるようです。途中、ざわつくところがありました。お巡りさんが風邪をひかないようにと胸にカラシの湿布をするシーンでした。わたしたち大人でもへぇーという感じですよね。そんなざわめきなら大して気にもならず楽しいものです。エンディング近く、わずか1ページで雪の世界からあっという間に早春となります。ここは声のトーンを上げて文を読み、冬から春へと季節が変わったことを声音でも伝えるようにしました。