絵本の旅人

「読み聞かせ」のための実践レポートです!

へいわってすてきだね

『へいわってすてきだね』 
 安里有生   著     長谷川義史  絵
 ブロンズ新社    2014年


あらすじと感想

2015年に本屋さんが選ぶ絵本大賞(「Moe」主催)第1位となった作品です。与那国島に暮らす小学1年生(当時)の男の子、安里有生(あさとゆうき)君が書いた詩に長谷川義史さんが絵を描き絵本にしたものです。また、この詩は「沖縄全戦没者追悼式」で安里君自らが朗読したそうです。ウクライナイラク・シリアでの内戦、アフリカ各地での虐殺や略奪、いまこの時も世界のどこかで戦乱と紛争により傷つき亡くなる人がいるのです。すべての人たちが平和に暮らせる世界はどうしたら生まれるのでしょう。つくれるのでしょう。安里君がいうように「みんなのこころから、へいわがうまれる」のでしょうか。安里君は願います。「ああ、ぼくは、へいわなときにうまれてよかったよ。このへいわが、ずっとつづいてほしい。みんなのえがおが、ずっとつづいてほしい。」日本では70年間、戦争も紛争も起こりませんでした。起こしませんでした。わたしたちの平和な暮らしはいかにかけがいのないものか、平和というものがどんなにすばらしいものか、すてきなものかを世界へ発信していくのが日本人の務めではないかと、この絵本に触れて強く思われずにはいられませんでした。詩と絵が、心と心がぴったりと重なったすばらしい絵本です。


読み聞かせレポート
対象: 小学1~4年 33人
場所: はまっ子ふれあいスクール

読み聞かせしてあげたい絵本。でも、子どもたちにはどうなんだろうな。物語りではないし、もともとは詩。詩を絵本にしたものは子どもたちにあまり受けない。それもテーマは、学校の授業でもよく取り上げられる、そのままズバリ「平和」だ。けれど、この絵本は違った。いい意味で裏切られた。子どもたちがちゃんと聞いている。言葉のひとつひとつを聞き取っている。のどかさがページいっぱい広がる与那国島のけしき、そこに暮らす子どもたちや動物たちをじっとみつめている。この本の文は、小学1年生の男の子が書いたんだよ、と話してから読みはじめました。同じ小学生が書いたということで関心が高まったこともあるでしょう。でも、言葉から、絵からなにかを確かに感じていました。読み終えてから、沖縄であった地上戦について少しだけ話をしました。おじいちゃんもお母さんも子どももお姉ちゃんもたくさんの人たちが殺されたこと。亡くなってしまったことを。こうしたテーマ性のある絵本を読んだ時、どうしても子どもたちに感想を求めてしまいがちです。今回はそうしませんでした。安里くんの言葉の輝きや長谷川さんの祈りのような絵を心に、記憶にしみこませてもらいたかったからです。