絵本の旅人

「読み聞かせ」のための実践レポートです!

あおい イヌ

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『あおい イヌ』
ナジャ 作  山中 きよみ 訳
福武書店 1991年
 

あらすじと感想

ある日、シャルロットという女の子のもとへあおいイヌがやってきます。毎晩、あおいイヌをなでてやりながらお話しをしてあげるシャルロット。すっかり仲良しになったシャルロットはお母さんに家で飼いたいとお願いします。でも、どこから来たのかわからないイヌなんてとてもは飼えません、とはねつけられます。あおいイヌは女の子の前から去っていきます。しょんぼりするシャルロット。そんな娘を元気づけようと両親は森へピクニックに連れ出します。ところが野いちご摘みに一人森の奥深くに入ったシャルロットは道に迷ってしまいます。夜を迎え、ほら穴でおびえているとあおいイヌがふたたび少女のもとへあらわれます。もうこれでひと安心と思っていると、恐ろしい森の精が黒ヒョウに姿をかえ、少女を食べようとやってきます。あおいイヌは死にものぐるいで黒ヒョウとのたたかいをはじめます。大判サイズの紙面に余白なしの見開き構成。写実的な絵の世界に異様ともいえるあおい色をしたイヌ、それだけでもう頭に焼き付けられます。子ども、とくに少女にとっていちばん必要で大切なこと、それはいつもだれかに守られているということ。作品は、そのことをあおいイヌという隠喩を通じて力強く描いているのです。

 

読み聞かせレポート 
対象: 小学1~6年 41人
場所: はまっ子ふれあいスクール

この日は全学年一斉下校だったので、1年生から6年生までそろった放課後の読み聞かせとなりました。椅子に腰を下ろして表紙を膝の上におき、みんなが静かになるのを待ちます。気づくと4年生の女の子たち3、4人、最前列に顔をならべています。へぇ~、めずらしいなあ…いつもなら遠巻きにして斜に構えているのに。あおいイヌは女の子を窮地から救ってくれるいわばナイト役。彼女たちはこの不朽のテーマの匂いを感じ取っていたのかもしれません。とても真剣に聞いてくれました。ラストにも満足げな表情を浮かべていました。さて、読み終えてから「このあおいイヌのようにみんなを守ってくれているものはある」と聞いてみました。1年生の女の子はお人形といいました。2年生の男の子はチンパンジーのぬいぐるみといいました。飼っている猫の名をあげる子もいました。「神様か……」といったのは4年生の女の子。最前列にいたひとりです。白馬の騎士じゃなかったみたいですね。「……きまった神様じゃなくってね、でも神様」わかります。わたしもずっとそう思って生きてきました。