絵本の旅人

「読み聞かせ」のための実践レポートです!

ソメコとオニ

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『ソメコとオニ』
 斎藤 隆介 文  滝平 二郎 絵
 岩崎書店 1987年

 

あらすじと感想

村に暮らす5歳のソメコは遊ぶことが大好き。でも大人たちは忙しく、だれもソメコの相手をしてくれません。草っぱらで一人ママゴト遊びをしていると、おじさんがあらわれ、一緒に遊んでくれます。ちょっとこわい顔をした人ですが、ソメコは仲良くなり、そしておじさんが住む岩屋へと来てしまうのです。じつはそのおじさん、人さらいのオニだったのです。オニは、金の俵を持ってこなければソメコをくっちまうという脅迫状を書こうとします。それを知ってもソメコはぜんぜん怖がりません。それどころかカクレンボしようというのです。人間のふりをやめてオニとなって見せても、虎の皮のフンドシ姿を笑われ、さらにオニゴッコしようといわれる始末。さて、こまりはてたオニはソメコの家にどんな手紙を書くはめになったのでしょうか……。子どもというものは、いつでも、どこでも、だれとでも遊びたくてしょうがないのです。子どもにとって、遊びとは呼吸のように大切なことなのですね。この絵本を読むとそれがひしひしと伝わってきます。

 


読み聞かせレポート
対象:小学1年生 約20人
場所:はまっ子ふれあいスクール

絵を見るかぎり時代背景は江戸あたりでしょうか。滝平二郎さんの絵も昔話にはうってつけの画風です。ストーリー自体は、人さらいしたオニが脅迫状を送りつけようとする現代的なプロットになっています。文には田舎ことば、子どもことば、方言が入り乱れ、遊び歌も顔を出したり、最後はオニの書いた手紙文でエンディングとなります。「ことば」そのものの役割も大きく、“読み聞かせ甲斐”のある作品です。芝居気<やや強>で読んだほうがいいと思います。子どもたちがどっとわいた場面は、人間の姿をやめたオニが虎皮のフンドシ姿となったときでした。子どもって、ほんとハダカが好きですよね。それまでクールに成り行きを見ていた子どもたちはそれから身を乗り出して、さかんに反応しはじめましたよ。読み終えると、「えっー、もうおわり~」という声が上がりました。