絵本の旅人

「読み聞かせ」のための実践レポートです!

クリスマスのおくりもの

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『クリスマスのおくりもの』
 ジョン バーニンガム 作  長田 弘 訳
 ほるぷ出版 1993年

あらすじと感想

クリスマスイブの夜、世界中の子どもたちにプレゼントを配り終えたおじいさんサンタがトナカイたちと家に戻ってきます。みんなもうくたくたです。一頭のトナカイは、おなかをこわしています。トナカイたちを休ませたおじいさんサンタは、自分もベッドで眠ろうとしたところ、あろうことか袋のなかにおくりものが一つ残っているのに気づきます。おじいさんサンタは、ふたたび赤いコートを着て、長靴をはき、おくりものを届けにひとり歩きはじめます。めざすは、バービー・スラムヘンバーガーという貧しい少年が住む遠い山のてっぺんのちいさな家。途中、飛行機乗りやジープの男、バイク乗り、スキーをはいた女の子、岩登りたちがサンタを助けてくれます。でも、落ちたり、ぶっかったり、すべったり、ひっくり返ったり、なかなか目的の山のてっぺんまで行き着くことができません。それでも、おじいさんサンタはがんばって少年の家へとたどり着きます。トナカイや少年へ対するおじいさんのサンタの淡々としたやさしさ、そのやさしさを実行する強さに心打たれます、読み終えたあとのやすらぎ感、幸福感はクリスマス絵本として最上の作品ではないでしょうか。

 

読み聞かせレポート
対象: 小学1~6年生 +大人 約25人 
場所: イベントホール

この絵本は、本文が40ページもあり、文字も多く、読み聞かせには15分程度の時間を要します。しかも大型本なので重量もあり、片手で持っていると、大の男でもちょっとつらくなってきます。ただ練習のときは大変でも、いざ子どもたちを前にした本番ともなれば、そんなものは吹き飛んでしまいます。長い作品なので、どうしても読む速度が速くなりがちです。ここは大作をじっくり味わってもらおう、そんな気持ちでとりかかったほうがいいでしょう。娘の通うピアノ教室のクリスマス会での読み聞かせにこの絵本を選びました。ピアノの先生からのご提案でシンセサイザーによる即興音楽とのコラボレーションをやってみることになりました。わたしにとってはじめての体験でしたが、前奏や効果音的なフレーズ、シーンによる展開、エンディングなど、随所にここちよい音が帆走してくれて、とても楽しく読み聞かせができました。即興といっても、事前に先生は絵本をなんども読み、どこにどんな音楽を奏でるかのプランを頭のなかにしまっていたのです。当日は楽譜台に同じ絵本をおき、わたしとシンクロしながらページをめくっていました。読み聞かせが終わったあとに、進行役もつとめられていた先生から、どうして、この絵本を選んだのですか? という質問を受けました。おじいさんサンタは、ハービーへのおくりものをやっとのおもいで届け終え、やっとのおもいで家へ帰ってきます。どんなにか疲れていたでしょう。でも、帰ってからまず最初にしたことはトナカイたちのところへ行き、そっと毛布をかけてあげることだったのです。自分よりもトナカイたちを気づかうその姿に涙がこぼれそうになりました。いろいろなクリスマス絵本にあたっていましたが、このシーンがこの絵本に決めさせたのでした。