絵本の旅人

「読み聞かせ」のための実践レポートです!

おしいれおばけ

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『おしいれおばけ』
 マーサ メイヤー 作
 今江 祥智 訳  偕成社 1987年

 

あらすじと感想

自分の部屋にあるおしいれ。男の子は、夜寝るときにそこが気になってしかたないのです。そこには“あいつ”がいるのです。その子にとっていちばんこわい存在が。ある夜、男の子は決心します。ヘルメットをかぶり、おもちゃの空気銃を手に持ち、あいつと戦うことを。おしいれから出てきたのは案の定、大きくて気味の悪いばけもの。でも、そいつの弱いこと弱いこと。おまけに泣き虫なのです。男の子はしかたなくおばけを自分のベッドに入れてあげます。そうして二人は眠りにつこうとするのですが……。子どもにとって、おしいれは隠れるところであり、同時になにかが隠れていると感じさせる場でもあります。いちばん身近にある異空間なのですね。だからなにが出てきても不思議じゃないんです。それにしても主人公の男の子は、胸がすくような強さがあります。またやさしさも。


読み聞かせレポート 
対象: 小学1・2年 28人
場所: はまっ子ふれあいスクール

えっ~もうおわり、もういっかい!もういっかい! 読み終えた後、アンコールの嵐が巻き起こりました。おはなし会を3年間やってきてはじめてことです。おしいれからおばけが出てくるという、まずそこに子どもたちは引かれます。日常怖れている事だからでしょうね。でも、その怖ろしいはずのおばけが、弱虫だったのですから、子どもたちは大喜び、大安心。そこが受けたのかな。それに主人公の益荒男(ますらお)ぶりが男の子の共感を強めたのでしょう。おばけがおもちゃの銃で撃たれて泣く場面があります。泣き声は書かれていなかったのですが、リハーサルで音読した際に自然に「うぇ~ん、うぇ~と」泣き声をあげてしまいました。たとえ擬音でも作者が書いてないものを付加するのはどうかな、と思いましたが、本番でもやはり「うぇーん、うぇーん」と泣き声を上げてしまいました。じつはこの泣き声のときにいちばん子どもたちがわいたのです。もう一度おばけが泣くシーンがあるのですが、そのときもどっとわきました。勝手に作品の文言を変えるのは御法度ですが、読み聞かせで自然に擬音が口をついて出て作品に生彩を与えるのなら、それは許せる範囲ではないかとわたしは思うのですが。