絵本の旅人

「読み聞かせ」のための実践レポートです!

おうさまのハンカチ

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『おうさまのハンカチ』
宮地 延江 作
ひさかたチャイルド 1984

あらすじと感想

ある国にわすれん坊のおうさまがいました。朝、きれいにアイロンをかけたハンカチを渡されても夕方にはもうどこかへ置き忘れる始末。たまりかねたお妃は、これまでなくしたハンカチを全部見つけてくるまでおうさまの大好きなクッキーを焼いてあげないと宣言。こまったおうさまは森にすむ魔法使いになくしたハンカチを集めてほしいとたのみます。あっちこっちからお城へと無数にハンカチが飛んできます。おうさまは山と集まったハンカチをお妃のもとへ運んでいくのですが、一枚足らないのです。ふたたび魔法使いの力にすがって、最後に残っていたハンカチが飛んでくるのですが、そのなかにはなんと……。権威あるおうさまという存在とあまりにも日常的かつ身近なハンカチという品、その組み合わせだけでもう愉快になってきます。クッキーが大好物なんてキュートなおうさまですよね。あったかな気持ちになるエンディングもじつにステキです。

 


読み聞かせレポート
対象: 小学1年~5年生 23人
場所: はまっ子ふれあいスクール

この絵本の前に読み聞かせた『あいしているから』は、むずかしかったのか、それとも教訓的なところが敬遠されたのか、場の空気がモヤモヤしています。「もう、一冊あるよ~」と声をかけます。「もう、いいよ」とか「やだぁ」という子はいません。ちゃんと、お話しを聞くモードになっているのです。さて、『おうさまのハンカチ』のはじまりはじまり。明快な構図にメルヘン感のある絵、ストーリーもわかりやすくてユニーク。子どもが日常的にやらかす“忘れもの”そして身近な“ハンカチ”がモチーフ。そしてなんといってもクッキー好きのおちゃめなおうさまが子どもたちに親近感を抱かせたようです。みんな楽しく聞いてくれました。この後、聞くモードから、読みモードにスイッチが入った子がいまして、常備してある紙芝居のなかから『ジャックと豆の木』を取り出してきて年下の子に読み聞かせをはじめました。複雑な家庭環境にあり、いろいろと問題のある4年生の男の子です。これまでにないことで驚きました。いっしょうけんめい最後までちゃんと読んでくれました。これには、はくしゅ、はくしゅ。ちなみにこの男の子、今回あまり受けなかった『あいしているから』を気に入っていました。