絵本の旅人

「読み聞かせ」のための実践レポートです!

あいしているから

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『あいしているから』
  マージョリー ニューマン 文  
  パトリック ベンソン 絵     
  評論社 2003年
 

あらすじと感想
巣から落ちてしまったひなどり。おやどりはいくら待っても助けにこないので、モールくんは家に連れて帰ります。巣箱をつくり、友だちやお母さんも手伝ってひなどりはなんとか無事に育っていきます。「ぼくのペットだ」とモールくん。「ペットじゃないわ。やせいのことりよ」とママ。はばだきはじめた小鳥を逃がしちゃいけないと檻(おり)のような鳥かごに入れてしまうモールくん。ある日、おじいちゃんがやってきて鳥かごの小鳥をみつけます。おじいちゃんはモールくんをさそって、高い丘へと出かけます。そこでは鳥たちが自由に空を飛びまわっています。モールくんも突風に吹かれて、ふわりと飛ばされそうになります。遠くひろがる野原と森、そしてモールくんの心に変化が起こります・・・。ちょい役のおじいちゃんなのですが、その知恵で世界をさぁーっと変えてしまうのです。おじいちゃん、すごい! 読後感がじつにさわやか。原題はMole and the Baby Bird。邦題は、『モールとひなどり』でよかったのでは。


読み聞かせレポート
対象: 小学1年~5年生 23人
場所: はまっ子ふれあいスクール

春休みに入って数日経ち、子どもたちはまったりモード。春休みは、長い夏休みやイベント盛りだくさんの冬休みと違い子どもたちのテンションはあまり高くないのです。「いまから<おはなし会>やるよ~」と声をかけると「えっ~」「やだぁ~」「工作しながらでもいいでしょ?」といつも以上に気のない反応。この日は、とくに読み聞かせぎらいの子が前にずらり。やればやるだけきらいになるのだったら、読み聞かせなんかやりません。でも何回かに1回はかならずヒットする作品があるのです。『あいしているから』は、さてどうだったでしょう? ページをめくりだすと、やだぁ~の子も絵本に入りこんでくるのがわかります。後半、おじいちゃんが登場してから、絵は詩的に物語は抽象的になってきます。このあたりでついてこれない子がでてきます。いちばんいいところなのに残念だなあ、そう思うのは大人の言い分。この本は、絵柄だけで見ると、5・6歳からという感じですが、「ペット」と「野生の小鳥」の違いがわからないとこの作品をちゃんと理解することはできません。“野生”の意味を知っていなければなりません。心に余韻を残すいい作品です。読みはじめる前に言葉の意味を教えてあげる必要がありました。そして読み終えたあと、子どもたちと話をする時間が持てればよかったなあ、と思いました。