絵本の旅人

「読み聞かせ」のための実践レポートです!

いつもちこくのおとこのこ― ジョン・パトリック・ノーマン・マクヘネシー

『いつもちこくのおとこのこ― ジョン・パトリック・ノーマン・マクヘネシー
ジョン・バーニンガム

あらすじと感想

学校へむかう途中、マンホールからワニがあらわれたり、茂みからライオンが出てきてかみつかれそうになったり……。ジョン・パトリック・ノーマン・マクヘネシーは遅刻をくりかえします。どうして遅れたか先生に聞かれ、ジョンはそのわけを話します。でも、そんなことあるはずはないと信じてもらえません。そのたびに「もううそはつきません」と何百回も反省させられます。ところが、途中なにひとつ起こらずジョンは遅刻せず学校に着くことができた日。なんと先生がゴリラにつかまって屋根の上にいるではありませんか。先生はジョンに助けを求めますが……。
オオカミ少年』の逆説版ともいえる内容の物語です。昔ならば村にオオカミがあらわれることもあるでしょうが、町中にライオンが出てくることはありえないことです。でも、ニューヨークの下水道にはかつてペットだったワニが生息しているらしいのでワニの出現はありえます! 往々にして子どもは願望や空想が入り交じった突拍子もない話をします。だからといって、そこに嘘というレッテルだけは貼りたくないものです。子どもの話はどんなことでもまずは信じてあげること。ちゃんと耳を傾けてあげることがいちばん。大人には辛口の、子どもには欣喜雀躍の作品かもしれませんね。


読み聞かせレポート
対象: 小学1年 21人
場所: はまっ子ふれあいスクール

主人公の男の子は、ワニにおそわれたり、ライオンに追いかけられたりしますが、バーニンガムの描く猛獣たちはみんなやさしい目と表情をしています。びっくりするエピソードの展開にみんな楽しそうです。でも、おっかなくていやな感じの先生が登場し、お説教がはじまるとその場の雰囲気が急につめたくなります。まるで自分たちが怒られているように表情が固くなります。橋を渡ろうとする男の子を高波がさらう場面があります。大波が男の子をのみこむ絵が見開きで描かれています。このとき、一瞬ではありましたが、その場がシーンと静まりました。あの巨大津波のことがみんなの頭をよぎったのだとわかりました。ありえない話の面白さがここだけ異質なものとなりました。エンディングは、男の子をさんざん嘘つき呼ばわりし、罰した先生もありえない出来事に見舞われます。これまでの仕打ちに一矢報いる男の子の痛烈な一言が先生に浴びせかけられます。ここは、どっとうけるかと思いきやみんなキョトンとしています。一年生にはちょっとシニカル過ぎたのかな。尻切れトンボ的に終わってちょっとがっかりでした。けれどその後、女の子がひとりやってきて「きょうのおもしろかったあ」と声をかけてくれました。こんなときはほんとうれしいですね、この一言。