絵本の旅人

「読み聞かせ」のための実践レポートです!

地獄

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『地獄』
 白仁 成昭 中村 真男 著  
 宮 次男 監修
 風濤社 1980年

 

あらすじと感想

天明4年、今から約230年前、無名の絵師によって描かれた「地獄絵」をもとに生まれた異色の絵本です。五平という男が死んだ後に、使いの鬼に連れられて、死出の山を越え、三途の川を渡り、えんま様のいる宮殿に着きます。そこで、えんま様から針地獄へおちよ、というさばきをいいわたされます。おののき、悔やむ五平。そこへお地蔵様があらわれて、なんとか、地獄行きはまぬがれます。しかし、えんま様から、地獄の世界がどんなものか、とくと見て、もとの世に帰って教え伝えよ、といわれるのです。五平は、生きものを大事にしなかった者が連れて行かれる「なます地獄」や嘘つきが落ちる「かまゆで地獄」、盗みをした者が味わう「火あぶり地獄」など、恐ろしい世界を見てまわります。そして、最後にもっとも痛ましく、つらく悲しい地獄「賽(さい)の河原」を知るのです。1980年の初版から2012年7月刊行で31刷となる、隠れたベストセラー「地獄」。人の罪科(つみとが)だけではなく「死」というものを突きつける衝撃の絵本でもあります。


読み聞かせレポート
対象: 1年~5年生  40名
場所: はまっ子ふれあいスクール

これは事件といってもいいほど子どもたちに衝撃を与えた読み聞かせとなりました。怪物や悪魔というおそろしくて、謎めいたものを好む子どもたちは、「地獄」という世界にも興味を抱いています。本のタイトル「ジゴク」と発しただけで、場は静まりみんなからソワソワ感が伝わってきます。輪切りにされたカラダ、九の字になって血を吐き流す人々・・・…。だれにでもかならず身に覚えのある“罪”、それに対する地獄での“罰”のなんと過酷なことか! ただただ呆然とする子、つばを飲みこむのも忘れたその顔には「まずいことになったぞぉー」と描いてあるようです。なかでも、先生たちをいつも困らせている常連の男の子たちがいちばん動揺していました。「ぼくもうだめだぁ~ジゴク行きだ」としょげる子に「これから良いことをいっぱいやれば、だいじょうぶだよ」と慰めると、「いやいや、そんなもんじゃ、だめだとおもう」という返答。おいおい、きみ、どんだけ悪いことしてきたの! 悪さではピカ一の4年生の男の子は、「死ななきゃいいじゃん」といっていました。まっ、たしかに死ななきゃ地獄へ行くこともないね。でも、そのあと「どうして人って死ぬんだろう?」とふか~い言葉をつぶやいていましたよ。