絵本の旅人

「読み聞かせ」のための実践レポートです!

モリス・レスモアとふしぎな空とぶ本

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『モリス・レスモアとふしぎな空とぶ本』
 ウィリアム・ジョイス  作  
 おびかゆうこ  訳  徳間書店 2012年
 
あらすじと感想

モリスは物語を読むのが大好き。自分でも本を書いています。毎日、うれしかったこと、かなしかったことなど残らずその本に書いているのです。あるとき、嵐がやってきて何もかも吹き飛ばしてしまいます。モリスの言葉もばらばらになってどこかへいってしまいます。途方にくれていると、空を飛ぶきれいな女の人に出会います。その人の青い本につれられてモリスはりっぱな館へ案内されます。部屋ではたくさんの本たちが飛びまわり、棚のなかにはかぞえきれない本がならんでいるのです。モリスはふしぎな本たちといっしょに暮らしはじめます。もちろん自分の本も書きつづけていきました。そうして時は過ぎ、モリスも歳をとり、やがて天国へと旅立つ日をむかえます。しょんぼりする本たち。でも、モリスが大切なものを残していたことに気がつきます。それは――。本と人の絆の深さを、人間にとって本がもうひとつの“いのち”であることを、このすばらしい絵本は教えてくれます。

 

読み聞かせレポート
対象: 小学1年~5年生  34人
場所: はまっ子ふれあいスクール

先に『ALDO』というJ・バーニンガムの作品を他のスタッフが読み聞かせをしました。読みはじめはかなり騒がしかったのですが、だんだんとみんな真剣な表情になっていきます。まるで憑きものが落ちたような変化です! 終わったとき、おきまりの拍手ではない、おごそかな拍手を聞くことができました。よしっ、このときを逃してはいけないと、急いで子どもたちの前に立ち、軽く一息ついてからモリスのお話しをはじめました。あせらずにゆっくりと。50ページほどのボリューム。さて、みんなの集中力は持つかな……ちょっと心配でしたが、ぜんぜん大丈夫。おしゃべりひとつ聞こえてきません。空飛ぶ女の人があらわれたり、年老いたモリスが若返ったり、この絵本にはサプライズシーンがいくつかあります。目の前に座っていた2年生の女の子がそのたびに顔を輝かせ、身をよじって隣の友だちと笑みを交わします。木漏れ日が目に入るようなここちよさを感じながら読み聞かせができました。