絵本の旅人

「読み聞かせ」のための実践レポートです!

なけない ちっちゃい かえる

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『なけない ちっちゃい かえる』
エクトラ・シエラ作  やまうちかずあき 絵
2004年 すずき出版

 

あらすじと感想

おたまじゃくしから孵(かえ)ったばかりのちいさなかえる。ぴょんぴょん跳びはねてとっても元気ですが、まだできないことがありました。ケロケロケロって鳴くことができないのです。ケケケとしか鳴けないのです。ちょっと悩みます。ほかはどうなんだろうと、池を飛び出してみました。あひるに会い、おんどりに会い、うしに会います。ぶたやひつじにも。そこでみんな違う鳴き声だということを知ります。ちっちゃいかえるは「ケケケでいいんだ」とさとります。そして、池に帰ってみんなのまえでケケケと大きな声で鳴きました。するとまわりのかえるたちは拍手と声援を送ってくれるのです。やがて、なけないちっちゃいかえるは・・・。コロンビア出身で戦争・紛争被害に遭った子どもたちへの支援活動を行っているエクトル・シエラさんの書いたストーリーです。金子みすゞの詩の一節「みんなちがって みんないい」を思い起こしましたが、この絵本ではちゃんとケロケロケロとじょうずに鳴けるようになって終わります。それを支えたのは仲間のかえるたち、ほかの動物たちです。気持ちのいいエンディングです。

 

読み聞かせレポート   
対象: 小学1年生 23人  
場所: 教室(読み聞かせの時間)

この作品の読み聞かせどころはやはり動物の鳴き声でしょうか。カエル、ちっちゃいカエル、アヒル、オンドリ、ウシ、ヒツジ、ブタ、7種類の擬音を発声します。あまりにリアルな鳴き声だと、子どもたちの反応がそこへ集中してしまいます。当然、ストーリーから浮いてしまいますよね。この作品は成長と社会をテーマにしているとわたしは思います。擬音自体を楽しむ作品とは異なります。といって無機的な鳴き声もおかしいです。似すぎずに、でもその動物らしい感じで、といったところでしょうか。この絵本は音楽の終楽章のようなすばらしいエンディングとなります。「ケ! ケ・・・ケケケケ・・・ケロ!・・・ケロ、ケロ!」詰まったような1音の鳴き声が、まず2音になります。そして「ケロケロ! ケロケロ! ケロケロ!」と4音になり、調べのようにほとばしりはじめます。読み聞かせでは、この最後の2ページを極めるといいでしょう。ちょうどクラスの仲間と一緒に学び始めた小学一年生にとって勇気を与える一冊になったと思います。みんな真剣に聞いていましたよ。