おじいちゃんがおばけになったわけ
『おじいちゃんがおばけになったわけ』
キム・フォップス オーカソン 作 エヴァ エリクソン 絵
菱木晃子 訳 あすなろ書房 2005年
あらすじと感想
エリックの大の仲良しだったじいじが突然、亡くなります。でも、じいじはおばけになってエリックのもとへやってきます。壁を通り抜けることができるじいじに喜ぶエリック。「この世にわすれものがあると、人はおばけになる」とおばけの本に書いてあるのですが、じいじはそのわすれものがなんなのかわかりません。じいじは自分の部屋の壁にかかった写真をながめながら、ばあさんとはじめてデートしてキスしたことやエリックのパパにおしっこをひっかけられたことなどを思い出します。町をうろつきながら、若かりし頃の思い出をエリックに話します。でも、わすれものは思い出せません。ある夜、じいじはエリックに聞きます。「おまえもおもいだしてごらん。おまえとわしとでしたことを・・・」エリックは、じいじと目がまわるまでジェットコースターに乗ったこと、海で砂の城をつくったことを思い出します。時々、タバコのにおいがしたじいじを・・・ともに過ごしたかけがいのないときを思い出していきます。そして、じいじは何をわすれていたかをエリックに告げます。あの世へ帰るときが来たのです。最後にほろりとさせられ、温かい気持ちで胸がいっぱいになります。
読み聞かせレポート
対象: 小学1年生 17人
場所: はまっ子ふれあいスクール
「おばけ」という言葉だけで、うわぁーいと盛り上がる子どもたち。でも、主人公の少年が大好きなおじいちゃんが心臓発作で突然、死んでしまうというはじまりに、水を打ったように静かになります。子どもたちにとって、たぶん世界で一番やさしい存在は、おじいちゃんとおばあちゃんです。この絵本は、怖くてぞくぞくするあの“おばけの本”とはちがうぞ、と別の心持ちで1ページ目からぐっと絵本のなかに引き寄せられます。でも、じいじが壁のなかを行ったり来たりする場面では、おばけらしいその行動につい感嘆の声をもらすのも、楽しい反応でした。読む前に少し不安だったのは、昔を回想するシーンでの文章量と子どもたちの理解力でした。ところがところが、長くかつ断片的なテキストでも集中力を切らしません。若かりし頃をじいじが回想するなか「酒をのみすぎて、バケツにはいたこともあったな」というところでは、大きな笑い声がわき上がりました。へぇー、意外にみんな大人じゃん! 正直、面食らいました。ほかにもここは1年生には通じないだろうなという予想が結構はずれ、うれしい誤算となりました 最後のほろりとさせる場面では、こちらがほろりとなりそうで困りました。声が少しでもうわずったりしたら、子どもたちの気がそがれます。せっかくの作品が台無しになるので、必死で自分を抑えました。それだけこの絵本は心打つ作品なのです。