絵本の旅人

「読み聞かせ」のための実践レポートです!

どろにんぎょう

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『どろにんぎょう』~北欧民話
 内田莉莎子 文   井上洋介 絵
 福音館 1985年

 

あらすじと感想

おじいさんがつくった大きなどろにんぎょうが動きだし、おばあさんを飲み込み、おじいさんも飲み込みこんでしまいます。そして通りを歩いていたふたりの娘が持っていた桶、天秤棒ごとひと飲みに。さらに三人のおばあさん、それから三人の漁師を舟ごと、三人のきこりをオノごと飲みこみ、どろにんぎょうはのっしのっしと進んでいきます。登場する人たちは、つぎつぎにどろにんぎょうのお腹に収まり、どろにんぎょうはどんどん大きくなっていきます。そこへ一頭のトナカイがあらわれます。「おまえも食べてやるぞ」と、どろにんぎょう。「わざわざ、ここまでくるのはたいへんでしょう。やまのしたでおおきなくちをあけてまっててください…」と、トナカイ。山の上からトナカイはまっしぐらにどろにんぎょうめがけて駆け下りていきます。結末はこのあたりでわかってしまうかもしれません。それでもクライマックスへ向かっていくわくわくした進行形は不滅です。またなんといっても美術家、井上洋介さんの絵が独特で記憶に深く刻まれる、そんな絵本でもあります。

 

読み聞かせレポート
対象: 小学1・2年 28人
場所: はまっ子ふれあいスクール

表紙に描かれた柄の悪い雪だるまみたいなどろにんぎょう。本を掲げると、条件反射的にコワ~イと黄色い声。すかさず、ゼンゼン!という声がそっちこっちで上がります。はじめる前、きょうは化けもののお話しだよといっていたので子どもたちの期待は高かったのです。どろにんぎょうが、おばあさんや自分を作ってくれたおじいさんを飲みこむというショッキングなはじまりに子どもたちは作品のなかへ一気にと引きずりこまれます。娘や漁師、きこりを飲みこむ絵はなかなかの迫力、でも、このどろにんぎょうの姿はどことなくユーモラス。なので“こわい”というフックで子どもたちを捉える感じではありません。トナカイがあらわれて、いよいよクライマックスとなるのですが、すでに結末を知っている子もいたようでネタをばらします。けれどネタがばれようがばれまいが、トナカイの角がどろにんぎょうの大きなお腹に突きささるシーンにみんな溜飲を下げます。ねえ、どうして血が吹き出ないの? 終わってから真顔で聞いてきた2年生の男の子。だってぜーんぶドロでできているからさ。どろにんぎょうに血なんてないんだよ。そう答えてから思いました……どろにんぎょうでよかった、よかった。