絵本の旅人

「読み聞かせ」のための実践レポートです!

かぜは どこへいくの

 

f:id:ehontabi:20220304175920j:plain

 『かぜは どこへいくの』
 文:シャーロット・ゾロトウ  訳:松岡享子
 絵:ハワード・ノッツ
 

ちいさな子どもからの質問攻め、これはだれにでも経験があるはず。
彼ら、彼女たちから、つぎつぎに湧いてくるクエスチョンに降参してしまった人も多いにちがいない。「ねえ、どうして木は立っているの?」 哲学者でも答えられないコトバも飛んでくる。
シャーロット・ゾロトウの絵本『かぜは どこへいくの』は、幼いおとこの子とおかあさんの会話ですすんでいく。
「どうして、ひるは おしまいになって しまうの?」と、おとこの子は、おかあさんにききました。「よるが はじめられるようによ。」
おとこの子は、外で遊べなくなってしまうから昼が終わるのが残念だ。しかし―日が沈んだからではなく、夜がやってきたからでもない、夜がはじめられるように、昼は夜に時間をゆずる。夜はくらいが、その子に夢をみさせてくれる。そして、昼はおしまいにならない。べつのところでまたはじまるから。こどもは終わりのない世界からやってきたお客さまだ。終わりというものを理解するのが苦手かもしれない。でも、この世界も「おしまいになってしまうものは、なにもない」「べつのばしょで、べつのかたちで はじまるだけ」だから。

ねどこのなかで、太陽と月、昼と夜のものがたりが、風と木とたんぽぽと、道のものがたりがつづいていく。終わりのないものがたりが、安らぎをあたえ、あたらしい一日をつれてくる。