だいくのたこ8さん
『だいくのたこ8さん』
内田 麟太郎 文 田中 六大 絵
くもん出版 2009年
あらすじと感想
いい腕の大工さん、それも8本も腕を持っているから、心強いですよね。4倍の力を発揮してくれますよ。でも、タコなので腕ではなくて足ですが! カブトムシのだんなが兜(かぶと)を飾る棚を注文してきたり、Rock好きのイカさんに思いっきりドラムが叩ける地下室をつくってあげたり、大工のたこ8さんは、まさに“ひっぱりダコ”! ついにおばけたちにも頼られてしまいます。この絵本の魅力は、やはりたこ8さんのキャラクターでしょう。きりっとした黒眉にねじりハチマキ姿、その躍動感あふれるしごとっぷりにしびれます。また、この絵本には大工さんにお酒をふるまったり、銭湯帰りの湯上がり姿、屋台のおでんやなど、ノスタルジックな日本の風景が描かれてもいます。そして、おばけによる“盆踊り”というこれまた日本的な大団円により、エンディングを迎えるのです。この古き良き“ニホンぽさ”もこの絵本の楽しき世界のもとになっているようです。
読み聞かせレポート
対象: 小学1年生 32人
場所: 教室(朝の読み聞かせ)
絵がマンガチックで派手なので、一見大ウケするイメージがあります。でも、話はいたってオーソドックスな展開。なので爆笑ということはありません。読み聞かせをしている間、子どもたちは静かです。あれ~どうしたのかな・・・不安になって、その顔をながめわたすと、みんなニコニコ、うふうふしているのです。じつに柔らかな表情です。たこ8さんを見ているだけで、きっとそんな顔になるのでしょう。ページいっぱいに、たこ8さんの仕事ぶりが描かれます。迫力があります。そんな迫力ある絵のほかにも、この絵本にはいろんな魅力的なディティールがあり、もう少し、ゆっくりみせてあげればよかったな、と反省しました。新しい棚に飾られた40個近い兜のデザイニング、工事中の地下室と地下の断面図、おばけ音頭のおばけたち、それと町並み、街角にもユーモアあふれる細部が宿り、味わいがあります。読み終えてからもじっくりと見させてあげたい絵本です。