絵本の旅人

「読み聞かせ」のための実践レポートです!

んぐまーま

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『んぐまーま』
谷川俊太郎 文  大竹伸朗 絵
クレヨンハウス 2009年

 

あらすじと感想

谷川俊太郎さんというと『マザーグース』の翻訳や『わらべうた』の編者でも知られています。また、「いるか いるかいるか いないかいるか・・・」や「かっぱかっぱらった かっぱらっぱかっぱらった・・・」など、ことばあそびでも傑作をいくつも生んでいます。古今東西の“ことばあそび”に精通した谷川さんが、現代画家、大竹伸朗さんと組んでつくられた絵本『んぐまーま』では、そのことばあそびの極北とでもいうような世界を表出しています。ストーリーも詩さえもありません。ことばから意味というおもたい服を脱がして、ことばは音と形だけのいわば丸裸のまま、わたしたちの前にあらわれます。たとえば「うやむやむ なむばなならむ」とか「だばがじで ごどぶげじょぴゃぎょの」とか。黙読ではだめです。声にしてはじめて、このことばたちはめざめます。読むわたしたちも気持ちよくめざめます。私たちは音を出す生きものだということに気づかされます。ページのなかには、大竹さんが描く<どこかをめざして進む>生きものがいます。この進行形の絵世界もなにか気持ちいいのです。さてさて、わたしたちの表現性はどこまで進んでいくのでしょうね。

 

読み聞かせレポート
対象: 小学1年~5年生  約40人
場所: はまっ子ふれあいスクール

「すご~くへんな絵本をもってきたよ! ストーリーはないし、ことばもよくわかんない。でもすごーくおもしろい、よむ?」そういうと、子どもたちは「よんで! よんで!」とはやしたてます。読み出して、さて、どうなるかと思いきや、子どもたちはじっと耳を傾け、絵本に見入ります。ときどき、「へんなの!」「ぷっ」という声や音が上がります。でも、つまらなそうにしている子は一人もいません。これはなかなかの当たりだぞ!と喜んだのも束の間、途中、かんだり、つまったり、言い違えたりするていたらく。かっこわるいったらありません。前日に数回、読み聞かせ当日には、4回も通しで練習したのになあ・・・。ごまかすために「だれか読んでみる?」と声をかけると、2年生、3年生の男子、5年生の女子が名のりをあげましたが、ことごとく敗北。新たに3年生の男の子が手を挙げチャレンジ。一番、読みにくいページを指定したところ、これが立て板に水のようにササッーと朗読してしまったのです。はじめて読んだらしいのですが、これにはだれもが拍手喝采。それなりに盛り上がった読み聞かせとなりました。「ほしくのしく りしくみしく てしくにゅく」これみなさん、一発でササッーと読めますか?