絵本の旅人

「読み聞かせ」のための実践レポートです!

サンタクロースがすねちゃった

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『サンタクロースがすねちゃった』
 アーヒム ブレーガー 著  ウテ クラウゼ 絵
 若林 ひとみ 訳 佑学社 1986年

 

あらすじと感想

“サンタクロースはいない”という記事が新聞に載り、そのニュースは町中にひろがります。クリスマスを楽しみしていた子どもたちもがっかり。やがてニュースはサンタたちのもとにも届きました。みんなかんかんです。サンタたちは<世界サンタクロース会議>をひらき、クリスマスプレゼントを配るのをやめる、という結論を下しました。ひまになったサンタたちは南太平洋で休暇を過ごすことに。そのことを知ったクルトという男の子が、サンタを連れもどそうと南太平洋までむかいます。着くとヤシの木の下で水着にサングラス姿のサンタたちがのんびりとしています(この絵には喝采をおくりたくなりますよ!)。さあ、クルトはサンタクロースになんというのでしょう? サンタたちはどうするのでしょう? 『サンタクロースはいるんでしょうか?』という本があります。今から100年も前にニューヨーク・サン紙の社説に書かれたものを本にしたものです。そこでは見えないものこそ確かなものだと書いてあります。『サンタクロースがすねちゃった』のでは、目を閉じて見えてきたもの、それはほんとうにいることなんだ、といっています。異口同音、どちらも信じられたものは“在る”ということを語っているのですね。


読み聞かせレポート
対象: 小学2~5年生 8人 
場所: 放課後キッズクラブ

「サンタさんって本当にいるの? それともいないの?」この問いかけ……クリスマスの絵本では永遠のテーマといっても過言ではありませんね。この日は、2~3年生が7人に、5年生が1人という少人数の読み聞かせでした。サンタさんの絵が描かれた本をかかげると、もう子どもたちは、いるの、いないので、盛り上がりはじめます。2年生は前を陣取りますが、5年生の男の子はかたまりから離れてまさに“斜に構えた”ポーズ。でも、みんなちゃんと耳を傾けてくれています。読み終えてから、「サンタさんを見たことある子いる?」とききました。「見たよ、でもお父さんだったよ」2年生の子が残念そうにいいます。すると「それもある、それもあるけど、それだけじゃない」と5年生の男の子。サンタがお父さんでもいいジャン、というニュアンス。「お父さんじゃないサンタクロースがいるってこと?」ときくと「うん」とこたえます。もしかしたら、フィンランド・ラッピ州の<サンタクロース村>のサンタさんのことをいってるのかな、そんな推察が一瞬、頭をよぎりました。あそこのサンタさんはどこよりも“本格的”ですからね! でも、そんなことよりも、お父さんサンタもありとする、その子のやさしい心がうれしく感じました。否定しない姿勢をかっこいいと思いました。