絵本の旅人

「読み聞かせ」のための実践レポートです!

トロールとばけものどり

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トロールとばけものどり』
イングリ・ドーレア エドガー・ドーレア 作
いつじあけみ 訳
福音館書店 2000年刊
 

あらすじと感想

森のおくへ薪をとりにいった4人の兄妹、そこで出会ってしまったのは、ものすごく大きなとりでした。それは山に住むトロールが飼っている“ばけものどり”でした。トロールというのは、ノルウェーに伝わる巨大で暴れん坊な妖精です。ばけものどりは村にやってきて兄妹たちの大事な馬ブラッケンをさらって食べようとねらっています。でも、銀ボタンの弾を撃ち込まれ、ばけものどりは死んでしまいます。村では、ばけものどりを丸焼きにしてみんなで食べ、唄えや踊れのお祭りさわぎ。その匂いにトロールの夫婦が気づいて、村を襲いに夜中に現れます。兄妹たちの家をこわそうとしたそのとき、日が昇り、光を浴びたトロールは・・・。バイキングの国らしい荒々しさを感じさせるメルヘンですが、牧歌的でユーモラスな絵になごみます。命をいただいたとりを、羽根枕や靴や船にするなど、余すことなくつかうところもりっぱです!

 

 

<読み聞かせ>レポート
 対象: 小学1年~3年生 14人 
 場所: 学童保育クラブ

読み聞かせのとき、文中に子どもに理解できない言葉がでてくることが多々あります。前後の文意や話し手の表現などで、直感的にわかってもらえる言葉もありますが、疑問や混乱のもとになる言葉もありますよね。この絵本では、「とき」という言葉がそうです。「とりが もういちど ときを つくって」という一文です。「とき」と聞いて「時」の意味に取ると、この場面は???となります。ときは「勝鬨(かちどき)」の「鬨(とき)」です。「『ときをつくって』というのはね、自分は強いんだぞって相手をビビらせるために上げる声なんだよ」と説明したくなりましたが、読み聞かせ中にはそうもできません。こういうケースでは、たとえば、読み聞かせの前、「鳥が相手をおどすときどうするか、みんなわかる?」などとさりげなく聞きながら、前もってその言葉の意味をおしえてあげるのも一手ですね。

 

※現在、この絵本は絶版で入手不可能となっています。下記のリンクは英語版です。