ちいさなヒッポ
『ちいさなヒッポ』
マーシャ・ブラウン 作 うちだ りさこ 訳
偕成社 1984年刊
あらすじと感想
おかあさんといつもいっしょのヒッポ。ちいさなヒッポにも言葉をおぼえなければならない時がきます。ヒッポは、シマウマや仲間のカバ、水牛に話しかけながら言葉の練習をつみます。ある日、川のなかで仲間たちが眠っている時にヒッポはひとり水面に出て、大きなワニに襲われてしまいます。さあ、たいへん、ヒッポは尻尾をつかまれ川の底へ引きずり込まれます。でも、ヒッポは「グァオ、たすけて!」とさけび、その声がおかあさんに届き、すんでのところで助かるのです。おそろしいワニをがぶりと口にくわえ、ふりまわすおかあさんカバの迫力ある絵が目に焼き付きます。木版画の素朴で暖かみのあるトーンと親子のきずなのストーリーがマッチした名作です。
読み聞かせレポート
対象:3歳~9歳 15人
場所:書店内イベントスペース
名作中の名作『ちいさなヒッポ』は、おそらくだれが読み聞かせても子どもたちを釘づけにするでしょう。でも、この絵本ほど読み聞かせの練習が必要なものはないと思います。なかでも繰り返し出てくるカバの吠える「グァオ」は物語のポイント、ポイントに使われるとても大事な擬音です。おかあさんがヒッポに言葉を教える場面はとくにむずかしく、母が子に同じせりふを言わせようとするのですが、ここは母と子の違いをしっかり表現しないと成り立ちません。後半では、ワニに襲われるシーンでのヒッポの「グァオ」、助けにやってきたおかあさんの「グァオ」、そしてラスト、カバにとって「グァオ」がいかに大切かをわかってヒッポが返事する「グァオ」。それぞれまったく異なる表現となるのです。読み聞かせ練習のやりがいのある作品なのです。