絵本の旅人

「読み聞かせ」のための実践レポートです!

エミリー

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『エミリー』
 
 マイケル・ビダード 文  掛川恭子 訳 
 バーバラ・クーニー 絵 
 ほるぷ出版 

 

詩人、エミリー・ディキンスンは、
晩年の25年間、
屋敷から外へ一歩も出ようとしなかったといいます。
でも、庭だけはべつで、草花を愛した彼女は、
腕のいいガーディニストだったようです。
そんなエピソードから生まれた絵本が一冊あります。
向かいの家に住む少女との心の交流を描いた作品です。
もし、天使と天使が話をしているのなら
きっとこんな会話なのだろう・・・。
うつくしい言葉と絵はちからをくれます。
一日が輝く絵本が世界にはいっぱいあります。

そんなエミリー・ディキンソンの詩のなかから
わたしの好きな一篇を……

 

 草はなすべきことがあんまりないー

  草はなすべきことがあんまりないー

  単純な緑のひろがりー

  ただ蝶の卵を孵し

  蜜蜂をもてなすだけー

 

  そしてそよ風が運んでくる

  美しい調べに一日じゅう揺れー

  日光をひぜに抱きかかえ

  みんなにお辞儀をしー

 

  そして一晩じゅう、真珠のような、

  露に糸を通しー

  美しく着飾るものだから

  公爵夫人も平凡すぎる

  その装いの前ではー

 

  そして死ぬ時もー神聖な

  匂いにつつまれて去るー

 

  『対訳 ディキンソン詩集』 

   亀井俊介 編 (岩波文庫