絵本の旅人

「読み聞かせ」のための実践レポートです!

ずどんと いっぱつ すていぬシンプ だいかつやく

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『ずどんといっぱつ すていぬシンプ だいかつやく』
 ジョン・バーニンガム作  
 わたなべ しげお 訳 
 童話館 1995年刊  対象年齢 5歳~

 

 あらすじと感想

 容姿が悪いため飼い主にすてられたメス犬のシンプ。町をさまよい、ねずみに邪魔者あつかいされ、のらネコに追い立てられさんざんな目にあいます。飼い犬が野良犬に身を持ちくずすみじめさがひしひしと伝わってきます。ついに野犬狩りにつかまってしまいますが、なんとか逃げ出したシンプ。やがてサーカス団と出会い、やさしいピエロのおじさんにひろわれることに。おじさんとともにベッドでねむるシーンには、ほっと心をあたためられます。やっと助かったと思いましたが、ピエロのおじさんはその芸がお客にあきられ、サーカス団をクビになろうとしていました。そこでシンプは大砲の弾丸にかわってピエロのおじさんが持つ輪の的(まと)を“ずどんと いっぱつ”うちやぶることに。バーニンガムのあじわい深い絵が心にいつまでも余韻を残します。

 

<読み聞かせ>レポート

 対象:小学1~4年生 31人  

 場所:学童保育クラブ

 くせのないうつくしい日本語訳です。地の文は、です・ます調を基本としています。所どころ文末の変化があるので、リズムが狂わないように注意しました。最初のもり上がりは、ネコにおそわれる場面です。野犬収容所を脱出する場面もそうですが、ここはスピード感をもたせてスリリングに展開するといいようです。この絵本のクライマックスは、シンプが大砲から打ち出される場面になります。ドラムの音がドロドロドロロ・・・と鳴りひびく発射直前のページでは、ドロドロドロドロ・・・をわざと長めにとって、子どもたちをじらしてみたら、みんなまだか、まだかと目を輝かしていました。あとは、ページめくりにまごつかないよう最大の注意を払って、ずどん!の見開きへとすすみました。ハッピーエンドの“エンディング”は、まだ数ページ続きます。クライマックスが過ぎ、子どもたちの関心が引いていきますが、ここは同調せず、先を急がず、それまでのすて犬の不運とみじめさをぬぐうように、ゆっくりとかみしめるように読みました。